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はじめに 道路事業によるオオタカへの影響については、道路の概略線形計画等の初期段階においてこれを回避及び低減するよう最大限努力するのが基本である。それでもなお影響が避けられない場合がある。人工代替巣設置は、このように真にやむを得ない場合の代償措置のひとつとして、オオタカとの共存をはかるために検討されたものである。 当財団では平成12年度から「オオタカの人工代替巣に係わる調査・検討」を自主研究として実施するとともに、また平成16年度には「既往文献等の資料収集によるオオタカの営巣環境の整理と特性把握」を実施し、これらの調査研究成果をもとに、本「オオタカの人工代替巣設置に関する手引き(案)」をとりまとめた。 |
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なお、本手引き(案)は、人工代替巣設置に係るひとつの提言を参考としてまとめたものであり、計画立案及び対策の実施にあたっては、対象地域の状況並びに有識者等の助言を十分勘案した上で、慎重に進めていく必要がある。 最後に、本手引き(案)の作成にあたり、終始ご指導・ご協力いただいた阿部學先生を始め、関係各位に深く謝意を表する。 平成18年9月
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発刊に寄せて ~人工代替巣設置の基本的考え方と架巣の前提条件~ 「種の保存法」対象猛禽類の保全と各種事業の推進をめぐって各地で論争が絶えない。路線近辺に巣がある場合、保護側はトンネルや迂回を主張したり調査の継続を求める。事業者は都市計画決定を盾に原計画を譲らない。膠着状態が続くと工期が延び経済的な損失が大きくなる。調査の継続とは、双眼鏡による飛翔の軌跡図を描くことで、得られた結果が影響の評価や保全策に全く生かされていない事実を勘案すると無駄の一語に尽きる。その証左は飛跡図と評価/保全策の間には何ら脈絡がないことである。原因は飛跡図を評価する「基準」が存在しないからである。この無駄な調査と経済的損失の回避を意図して、かねてより人工巣を用いて猛禽類の保全と事業との共存を図る技術を発案し適用してきた。 この発想の原点は路線上に人家や墓地が存在すると移転という形で対処している。時として土地収用法をも適用する。通常は代替地の斡旋、移転費用の補償となる。猛禽類も同じ発想により居所の移転を促すものである。これまでの事例から猛禽類は必ずしも同じ巣である必然性がない。例えば、自ら巣を移したり、営巣木の枯損、台風による倒伏、支持枝が折損すると、翌年には他で営巣するのを常とする。 この技術の公開にあたり、以下の条件が守られない懸念があり長年、公表が躊躇されてきた。ところが最近、各方面からの照会や意図に反する模倣が出てきたため、敢えて前提条件を提示して公表した方が良いと判断された。この条件を満たすことなく本技術を適用すると事業だけが進み猛禽類は体良く追い出されるだけで、自身はもとより種族にとってもプラスになるデータは何も蓄積されないことになる。本技術の適用に際しては、環境容量の定量的把握、架巣条件の把握、餌現存量と消費量の定量的把握などがなされなければならず、このデータが猛禽類の保全に資することになる。猛禽類の「専門家」として、各地の委員会に参加されている方々は、このことを肝に銘じ、単なる追い出しに手を貸すことにならないように注意されたい。人工巣適用に当たっての遵守事項を以下に記す。 1)誘導先で生存し続けられる餌資源などの環境容量の確保、2)誘導先選定に当たっては、生息環境解析を行い適地へ誘導する。山勘でこの樹林地が良かろうといったやり方は慎むべし、3)既存の架巣環境を解析し、適所に人工巣を架設して誘導する、4)誘導先に先住者がいないことの確認、5)木枝の人工巣は耐久性に乏しく、再架巣時には事業者は存在しないので、恒久的な素材を使用すること、6)誘導先が開発されないよう市街化調整区域/緑地保全地域への指定、借地などにより事業者と地方自治体が協力して誘導先を担保する、7)財力にあかして多数の人工巣を架設しないこと。偶然に成功すれば、猛禽類に関するデータが全く蓄積されないまま事業が完成する。以上、当然のことながら解析に当たっては、統計的処理に耐えうるサンプル数が必要である。 これまでの20年に及ぶ猛禽類アセスに投入された時間と金額に対して、「専門家」はどのような影響評価の方法を確立したか、事業完成後、生存を保証するためにどのような貢献をしたのか、生態的基礎資料をどれだけ蓄積したか、減少要因が何であるかを解明したかなどについて総括する必要がある。目指す先が見えず、単なる想像で悪影響を誇張し、過大な対策を強いてきてはいないかも反省する必要がある。世界広しといえども双眼鏡で絶滅危惧種を守った例を知らない。 平成18年9月 日本猛禽類研究機構「ラプタージャパン」理事長 |
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