RIRS 一般財団法人日本みち研究所のロゴ


 

<Q&A一覧へ

緑色の四角いマーク

立体道路制度Q&A

立体道路制度の概要

Q3.立体道路制度を活用するメリットはどのようなものですか?

A3.新設・改築道路の場合と既存道路の場合において、それぞれ次のようなメリットがあります。
■新設・改築道路の場合
①地権者のメリット
  • 従来、道路区域の土地は道路事業者が全面買収していましたが、道路の区域が立体的に定められることで、従前地権者はそれ以外の道路の上下空間の利用が自由になるため、同じ場所で継続して居住・営業することが可能となります。
②道路管理者のメリット
  • 道路として利用する部分のみ権利を取得するため、用地取得費が軽減されます。
  • 道路単独の整備を行う場合よりも、地域の合意形成が得やすくなります。
③まちづくりのメリット
  • 大規模な道路整備において、地域分断や、良好な市街地を形成する上で支障をきたすケースを解消できます。
■既存道路の場合
①地権者のメリット
  • 従前の街区規模にかかわらず、大街区化整備の実現機会が増大するため、土地の合理的活用や価値向上が期待できます。
②道路管理者のメリット
  • 現位置のまま、道路法に基づいた道路管理を継続することが可能であり、地下埋設された道路占用物への影響もありません。また廃道等による代替通行機能の確保等の措置が必要ありません。
③まちづくりのメリット
  • 既存道路の付け替えや廃道をせずに、道路の上部空間を活用した大規模建築物の建築により都市開発の機会が増加し、都市の国際競争力を強化できます。
  • 周辺利用者を含めいままで通りの通行ができ、遠回り等の不便が生じません。


■立体道路制度創設の背景と経緯

(1)立体道路制度創設の背景

1980年代後半、大都市地域を中心として道路渋滞が激化する中で道路改善ニーズが切実となり、道路事業進捗を図ることが急務になっていました。

その一方で、幹線道路の整備は、用地費の高騰や代替地の取得難により道路用地の取得が困難であり、事業が円滑に進みませんでした。

そこで、こうした市街地の幹線道路の整備と併せ、良好な市街地環境を維持しつつ適正かつ合理的な土地利用を促進するため、その周辺地域を含めて一体的かつ総合的な整備を行う必要がありました。

(2)立体道路制度の創設と適用範囲拡大の経緯

しかしながら、以下の法制度では、道路の上下空間における建築物の建築は、適正な道路管理及び良好な市街地環境を確保する観点から原則禁止されています。

(道路法)
  • 道路の区域内については、私権を行使することができない。
  • 道路の上下空間における建築物の設置は例外的にしか認められていない。
(建築基準法)
  • 道路内に建築物を建築できる場合が極めて限られ、建築できる場合でも特定行政庁の許可が必要

このため、平成元年に道路法、都市計画法、建築基準法等を改正し、道路と建築物等を一体的に整備するための立体道路制度が創設されました。

(道路法第47条の6 ※現在は第47条の7)
  • 道路の新設又は改築を行う場合において、道路の区域を空間又は地下について上下の範囲を定めたものとすることができる。
(都市計画法第12条の11)
  • 道路(自動車のみの交通の用に供するもの及び自動車の沿道への出入りができない高架その他の構造のものに限る。)の整備と併せて建築物等の整備を一体的に行うことが適切であると認められるときは、道路の区域のうち、建築物の敷地として併せて利用すべき区域を定めることができる。
(建築基準法第44条1項3号)
  • 地区計画の区域内の自動車のみの交通の用に供する道路又は特定高架道路等の上空並びに路面下に設ける建築物について道路内の建築制限の適用を除外することができる。

立体道路制度の適用範囲は、創設当初、新設または改築する自動車専用道路及び特定高架道路等に限られていましたが、その後、社会情勢の変化や多様化する国民のニーズに対応するため、弾力的な運用が行われてきました。

具体的には、下記の経緯で緩和措置がなされてきました。

①国土交通省の通達等により、平成17年に歩行者専用道路等への制度適用が可能となり、平成21年には駅舎等の自由通路への制度適用の推進が図られました。

平成26年には、首都高速道路等の高速道路の老朽化に対応した迅速かつ計画的な更新事業を推進するため、道路法を抜本改正し、既存道路についても適用範囲に含めることになりました。

③都市の国際競争力の一層の強化等を図るため、特定の地域の一般道路においても、道路空間を活用した都市再生の推進が図られるよう、平成23年及び26年に都市再生特別措置法が改正され、道路と建物の重複利用区域を定めることで、道路内の建築制限の緩和が可能となりました。さらに、平成28年には、道路法改正により、道路の立体的区域を決定する場合の国有財産法、地方自治法の行政財産の処分に関する規定を緩和し、都市再生特別措置法の改正により、建築物の道路上空利用が可能な地域が特定都市再生緊急整備地域から、都市再生緊急整備地域全域へ拡充されました。

平成30年には、都市計画法と建築基準法が改正され、地区整備計画で重複利用区域が設定されたすべての道路で、立体道路制度の適用が可能となりました。(7月15日施行)

なお、令和2年5月に道路法が改正され、交通混雑の緩和や物流の円滑化のため、バス、タクシー、トラック等の事業者専用の停留施設が道路付属物(特定車両停留施設)として認められることとなり、バスターミナル等の整備に立体道路制度の適用が期待されます。


立体道路制度の創設と適用範囲拡大の経緯

法改正、運用に関する通知等 立体道路制度の適用範囲等
平成元年 立体道路制度を創設
(道路法、都市計画法、都市再開発法、建築基準法を改正)
  • 適用範囲は、新設または改築する自動車専用道路及び特定高架道路[道路法47条の7、都市計画法12条の11、建築基準法44条]
道路法等の一部を改正する法律等の施行について(都市局長・道路局長・住宅局長通達 H1.12.20)
  • 都市モノレール、路外駐輪場等で一般的な道の機能を有しないものについては、建築基準法第42条の「道路」として取り扱われない。
平成17年

立体道路制度の運用について(都市計画課長、路政課長、市街地建築課長通知)
http://www.rirs.or.jp/business/rittai_sodan/pdf/rittai_qa_pdf01.pdf

  • 適用範囲をペデストリアンデッキや自由通路、スカイウォークのような歩行者専用道路、自転車専用道等の「自動車の沿道への出入りができない構造」のものに拡大
平成21年

自由通路の整備及び管理に関する要綱(国土交通省都市・地方整備局街路交通施設課)
http://www.rirs.or.jp/business/rittai_sodan/pdf/rittai_qa_pdf02.pdf

  • 自由通路整備への立体道路制度の適用を促進
平成23年

道路法施行令、都市再生特別措置法等の改正
http://www.mlit.go.jp/report/press/city05_hh_000033.html

  • 改正都市再生特別措置法による特定都市再生緊急整備地域内の道路(特定都市道路:都市計画道路を含む)への適用範囲の拡大[法36条の2]
  • 道路法施行令改正(占用物件追加)[令7条]
平成26年

道路法、都市再生特別措置法等の改正
http://www.mlit.go.jp/report/press/road01_hh_000395.html

  • 改正道路法による既存道路への道路立体区域適用範囲の拡大[道路法47条の7、都市計画法12条の11、都市再生特別措置法36条の2]
  • 都市計画道路必須要件削除(改正都市計画法)
平成28年

道路法等の一部改正の施行に伴う関係省令の公布について:H28.9.28
http://www.mlit.go.jp/report/press/road01_hh_000750.html

改正都市再生特別措置法の施行:H28.9.1 http://www.mlit.go.jp/toshi/toshi_machi_tk_000059.html

  • 改正道路法による道路の立体的区域を決定する場合の国有財産法、地方自治法の行政財産処分に関する規定の緩和[法47条の7]
  • 改正都市再生特別措置法による都市再生緊急整備地域内の道路への適用範囲の拡大[法36条の2]
平成30年

「都市再生特別措置法等の一部を改正する法律案」を閣議決定:H30.2.9 http://www.mlit.go.jp/common/001220830.pdf

「改正都市計画法」施行:H30.7.15

「改正建築基準法」施行:H30.7.1

  • 改正都市計画法、建築基準法による一般道路への立体道路制度の適用対象の拡充(地区整備計画で重複利用区域を定めた全ての道路に拡充)
    [都市計画法12条の11、建築基準法44条]

立体道路制度の運用について(国土交通省都市局長、道路局長、住宅局長通知:H30.7.13)
pdf

立体道路制度の運用について(国土交通省都市局都市計画課長、都市局市街地整備課長、道路局路政課長、住宅局市街地建築課長通知:H30.7.13)
pdf

道路法等の一部を改正する法律等の施行について(建設省道路局路政課長通知:第86号通知の最終修正:H30.7.13)
pdf

  • 道路法改正に伴う立体道路制度の運用に当たっての留意事項
令和2年 道路法等の一部を改正する法律が成立:R02.5.20
  • 交通混雑の緩和や物流の円滑化のため、バス、タクシー、トラック等の事業者専用の停留施設を道路附属物として位置付けることを規定[法48条の30~36]

■最近の立体道路制度の拡充について

平成30年の都市計画法と建築基準法の改正により、地区整備計画で重複利用区域が設定されたすべての道路で立体道路制度の適用が可能となり、令和2年5月の道路法改正で、道路付属物にバスターミナル等事業者専用の特定車両停留施設が追加されました。

▲ 上に戻る